![]() |
-事件の顛末- 知らない間にレセプトが消えた!? |
【国保連合会からの連絡】 |
某有床診療所が国保連合会にオンライン請求した平成28年9月診療分の入院レセプトのうち2件が、 |
医療機関が知らない間にサーバーから自動削除され、その2件分の診療報酬が支払われなかった、 |
という事件が起こりました。 |
たまたま偶然に、その2件のうちの1件の患者が高額療養費の請求を行い、国保連合会がレセプトを |
確認しようとしたところ、平成28年9月診療分のレセプトがサーバーから削除されていました。 |
それで医療機関に連絡が行き、事態が発覚しました。 |
もしも、その患者が高額療養費の請求を行わなかったら、永久に分からず、レセプトは未収のままに |
なっていたところでした。 |
【レセプトは何故削除されたのか】 |
幸い医療機関に電子レセプトのバックアップが残っていましたので、それをもとにテスト用の |
電子レセプトを作成し、試験的オンライン請求を行って原因が判明しました。 |
原因は、 |
●レセコンに不具合があって、作成された電子レセプトに小さな誤りがあった。 |
●受付・事務点検ASPは電子レセプトの誤りを検出したまではよかったが、誤りの箇所を誤認し、 |
誤ったエラーを表示した。 |
●エラー表示を見た事務は紙レセプトを発行して確認したが間違いは見つからず、そのまま放置した。 |
●請求が確定されていなかったため、オンライン請求受付期間が終了する日の夜中の24時に「自動確定」 |
プログラムが実行された。 |
●「自動確定」の際に請求確定(エラー分除く)で確定されたため、エラーのある2件の入院レセプトが |
自動的に削除された。 |
●その時点で医療機関には連絡が行かなかったので、削除されたことがわからなかった。 |
というものです。 |
【レセコンの誤作動】 |
誤作動はレセコンが電子レセプト(RECEIPTC.UKE)を作成する過程で起こりました。エラーのあった |
電子レセプトをメモ帳で見ると、 |
![]() |
となります。 |
赤字の数字(コード)が間違いの箇所です。 |
ただ、これでは何のことかわからないので、後述します。 |
【受付・事務点検ASP】 |
レセプトが送信されると、まず受付・事務点検ASPがレセプトをチェックし、単純な間違いを検出します。 |
受付・事務点検ASPはこのレセプトをエラーと判定しました。 |
![]() |
受付・事務点検ASPは、「請求点数が誤っています」「外泊(入院基本料の減額)の78点が間違いで、 |
正しくは104点です」と判定しましたが、これが誤認でした。 |
事務は、画面のエラーを訂正しようしてと、紙レセプトを発行して該当患者の内容を確認しました。 |
![]() |
この患者は平成27年9月1日に入院、9月22日と9月23日に外泊しました。 |
外泊(入院基本料の減額)の点数は78点×2で間違いはありません。 |
紙レセプトには受付・事務点検ASPの画面に表示されたような間違いは見当たらず、訂正したくても |
間違っていないものは訂正できません。 |
【請求確定】 |
オンライン請求では、受付・事務点検ASPの段階では請求は確定していません。 |
![]() |
「請求確定(エラー分含む)」あるいは「請求確定(エラー分除く)」をクリックすることによって |
請求が確定します。 |
ところが、この医療機関では訂正したくても、間違いが見当たらず、レセプトを訂正できなかったために、 |
請求確定を行わず、そのまま放置しました。 |
【自動確定】 |
請求確定が行われない場合、オンライン請求受付期間が終了する日の夜中の24時になると、サーバーでは |
「自動確定」が実行されます。 |
「自動確定」とはサーバーが強制的に請求を確定させるプログラムです。その際に「請求確定(エラー分 |
除く)」で確定されます。 |
この医療機関では確定操作を行わず放置していたので、「自動確定」が実行され、「請求確定(エラー分 |
除く)」で2件のレセプトが自動的に削除されました。レセプトが削除されたので、 |
2件分の診療報酬は支払われませんでした。 |
「自動確定」が実行されると、サーバーには履歴が残ります。本件ではサーバーに履歴が残っていたため、 |
「自動確定」が実行されたことが確認されました。 |
|
【外泊マスターの間違い】 |
メーカーが調査したところ、レセコンの誤作動は、入院の外泊マスターの小さな誤りに起因することが |
判明しました。 |
注意すべきは、電子請求の場合、紙に出力した紙レセプトと電子レセプトでは必ずしも一致しないことが |
ある点です。 |
今回も紙レセプトでは間違いはありませんでしたが、電子レセプトでは目に見えない間違いがありました。 |
該当患者のレセプトを電子レセプトビューアでみると、以下のようになります。 |
![]() |
この患者は9月1日に入院して、9月22日と9月23日に外泊したので、78点は正しい点数です。 |
ただ、赤矢印の「有床診療所入院基本料5(14日以内)」が誤りで、正しくは「有床診療所入院 |
基本料5(15日以上30日以内)」です。 |
【受付・事務点検ASP はどこを誤認したか】 |
では受付・事務点検ASPはどこを誤認したのでしょうか? |
電子レセプトで比較すると、 |
![]() |
190097210=「有床診療所入院基本料5(14日以内)」に対応する外泊の点数は104点です。 |
それで受付・事務点検ASPは固定点数が78点ではなく104点である(固定点数の誤り)と誤認しました。 |
実際は78点が正しくて、190097210=「有床診療所入院基本料5(14日以内)」が間違いでした。 |
190119710=「有床診療所入院基本料5(15日以上30日以内)」が正しい記録です。 |
![]() |
正しいレセプトをレセプトビューアでみると以下のようになり、紙レセプトと一致します。 |
![]() |
【外泊マスターの間違い】 |
この医療機関の電子レセプトのバックアップより、1年間の入院レセプトをチェックしたところ、 |
新たに11件に同様のエラーレセプトが見つかり、うち9件について診療報酬が支払われず未請求状態で |
留まっていたことが判明しました。未請求状態の9件は1年遅れて再請求することで無事支払われ、一件落着 |
しました。 |